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 ふたりで家を

 03-1 大切なものはなに?


大切なものはなに?
1998年 秋
試行錯誤を何十回、何百回と繰返し、何とかたどり着いたプランは、
工務店との打合せが 始まり、既に基礎伏せ図や軸組み図といわれる
構造図のスケッチができつつあるほどに 進んでいた。
本来ならこの段階は、頭の中では竣工のイメージがきちんと想像できて、
更にそこでの 生活が次から次へとわいてきて、何とも楽しい時である。
「いよいよこれから。頑張ろう!」…となるはずなのに、
この心の中の“引っ掛かり”は 一体なんなのだろう(Vol.2参照)。

新しい家を建てると、家具もすべて新しく買い換えてしまいたいと思う
建て主がいる。
逆に、今使っているあの家具だけはぜひ持ち込みたい、という場合もある。
つまり、誰にでも新しい家に積極的な意味で
“持ち込みたい何か”が必ずある 、ということだ。
そしてその「何か」が、
その人にとっての快適性を解き明かすヒントに なっていると思う。
私たちのところに家を建てる相談に来ていただいた方には、
アンケートを記入していただいているが、その中の「持ち込み家具リスト」は、
ただ空間に家具の寸法を納めるためにだけ
書いていただいているのではなく、
「持ち込みたいもの」を通してその人の価値観を少しでも理解したい、
という意味もある。
ある施主にとっては「何か」は旅先で買ったシルクの布だった。
新居の壁に掛けて、眺めながら過ごしたいという。

さて、私たちはというと……。
結婚する時に双方の両親が用意してくれた食器棚やワードローブ、
チェスト、 夫が高校時代から使い続けているオーディオ機器、
妻の父の代から使っている本棚、 祖父から譲り受けた机…
そのすべてがきちんと既に進行中の図面には納まっている。
それなのになぜ、こんなに引っ掛かるのだろう。
「ねえ、今ならまだやり直せるよ」切りだしたのは妻のほうだった。
それまでお互い心の中の 疑問符を口にしたことはなかったが、
夫もずっと同じことを考えていたという。
妻「バイクが何かないがしろだよね……」
夫「庭の木もただ残しただけって感じだし」
そう、今までの人生の中で一番大切にしてきたもので
抜けているものと言えば、 夫のバイク、
そして庭の樹木と家との関係性だった。
私たちが住む家を、自分たちの気持ちにもっと素直になってもう一度
考え直してみようと 決意した瞬間だった。
ラフスケッチ










さるすべりが見える案



 
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