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 ふたりで家を

 08-1 「家」という名の器に「生活」という名のご飯をもりつけ


●1999年10月1日新居へ引越しの日
2年位前から二人の中に芽生えた「家を造りたい」という気持ち。
その気持ちが、周囲の協力を得て目の前に現実の形となった。
ひととおりの荷物が運び込まれ、ほっとした頃にはもうあたりは暗くなっていた。
すごく疲れているはずなのに、私達はふたりとも興奮状態だ。
近所で買ってきたお弁当を山積の荷物の中で食べながら、
スナップ写真を撮りあったりして、
まるで修学旅行中の生徒のようにいつまでも眠れずにいた。
ベッドに入り、シナ合板目透かし貼の天井の目地を眺めていると、
張ってくれた大工さんの姿が浮かんでくる…
夢に見た入居の日、長かったような短かったような…
まだ土間のタイル貼りと格子戸の取り付け等、残工事がある。
明日も早くからタイル屋さんが入る予定だ。
早く眠らなくては。

1週間2週間が過ぎ、家具や物が少しずつ其々の定位置を見つけ、納まっていく。
ただの「箱」だった家が、そこに住む人間にとって「マイホーム」に変わっていく
大切な瞬間だ。
以前読んだことある著名建築家の本の中に
”「ハウス」は建築家が作るもの、
「ホーム」はそこに住む人間が造っていくもの”
という一説があった。
それは深く記憶に残り、折にふれ蘇ってくる言葉だった。
設計段階から一生懸命考えてきた思い出の詰まった家具や、
生活に欠かすことのできない必需品、はたまた全く機能は持たないものの、
そばに置いておきたい飾りものの類…等の 納まる場所、
果たして意図した通りにいくものかどうか。
仮に同じ「箱」を用意しても、それを誰がどう使うかで全く異なるものとなるだろう。
それがソフトである「住む」という行為の面白さだと思う。
私達はハードである「箱」としての家と、ソフトである「住まい」としての家の
微妙な関係というかバランスの部分にとても惹かれる。
どちらかが突出していても良くないと思うし、密接な関係にありながら
「箱」としての形に束縛されない許容範囲のある「家」の中で、
自由に生活が送れたらと思う。
それは前述の本の中の言葉の示すように、どう努力しても、
設計者としてだけでは最終的には 踏み込めない部分。
きっと施主に完成した住宅を引き渡してしまう時の寂しさは、それが理由だ。
…でも今回だけは違った!!
自らの力で、「箱」としての家を「住まい」へ変えていけるのだ。
土間にバイクを置いた。
旅先で買った小さな木彫りの象を、階段横の左官仕上げの壁の上に
チョコンと載せた。
吹き抜けに面したギャラリー(たった2畳)と名付けたスペースに絵を掛けた。
土間の玄関横には、そのうち木のベンチを買って置こう。
そして最終的にはずっとずっと住んで、
住み込んで、住み続けて、時間を経ていかないと得られない何かが
あるような気がする。

天井はシナ合板






左官仕上げの壁






屋根のある土間



 
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