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 『建築家と家を建てることについての10章』 written by 中原洋

 10 暮らしの見える家 見えない家


いま、日本の家は木造住宅が主流になっています。
しかし、振り返ってみると1960〜70年代、日本の建築家が建てた家の主流は、
コンクリート打ち放し住宅でした。
ガッチリとした、内部のうかがい知れないクローズドな家が主流でした。
住宅にも結構、流行りすたりがあるものです。

では、なぜコンクリートだったか。 
ぼくの結論では、戦後を生き抜いてきた人たちの頭の中に焼き付いていた焼け野原の
風景の結果だと思います。焼けてなくならない家が欲しかったのです。
神戸の震災後でもそうしたことはありました。

もうひとつ理由は、手に入る都市の土地があまりに矮小化して、
他人との距離がうまくとれなかったのでしょう。
身を守るためには内部を窺うことのできない家を建てたほうが安全という思い込み。
ぼくの家もそうです。だから反省しています。

木の家が町に広がっていくのを見ると、改めて平和な時代になったなと思います。
そこで気になるのが、外からの視線にどんな風に対応するかです。

映画の寅さんも確か言っていました。
「夜の帳が降りて、コスモスの花が咲き乱れた庭に、茶の間の団らんを感じさせる明かりが落ちてくる。
これこそが幸せじゃあないですか」と。
そんな風に彼が喋っているのを聞いた覚えがあります。

近頃、暗い町を歩いていると突然、人の動きに応じて明かりがつくようになっている家を見ることがあります。
こちらもどきっとします。
そのお宅の住み手の神経ぴりぴりしている様子がこちらを刺激してきます。

暮らしの安全を望むなら、家の内部の温かい暮らしが感じられる造りの方が
いいような気がするのですが、いかがでしょう。

これはコンクリート、木造、そのいずれでも同じことですね。


 
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