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 『建築にも仕掛けがあります。』 written by 中原洋

 01 中途半端な壁が  空間を広くします


間に何かがあって、はじめて人はもっと距離感を感じる。建築家の設計図を見て、変とか、意外とか思うところは大抵、意味があります。

これはその一つ。
写真の壁は中途半端な壁です。
ご覧のように左も右も、そして上も素通しになっています。
それでもなければいけないのか。
建築家は考えたのです。
キッチン ---- それは作業場、それはあんまり見せたくないと。
しかし、この家は小さい。
極端に小さい。
土地は19坪でしかない。
ここを閉じてしまうと息が詰まるような狭さになってしまわないかと。
そこでキッチンを見えるような見えないような、中途半端な感じにしたのです。
ここを壁にして閉じてしまえば、手前の巾2.4メートルの空間は2.4メートルでしかない。
じつはそれほどこの家は狭いのです。
で、向こうの空間の存在を感じさせて、併せて4メートル、と感じさせたかった。
それともう一つ。もっと大事な心理学。
間に何かがあって、はじめて人はもっと距離感を感じる。
何もないより、何かが間にある方が距離感が生まれる。
機能的意味よりも、心理的な反応がここでは求められた。
これがこの建築の面白さのようです。


 
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