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 『工夫のClip Board』

 17 ある改修工事に携わって・・。


この初夏から、障害を持つ方の改修工事を計画を立てておりました。
夏の終わり、予定より2週間程工期がかかって無事終了することが出来ました。

施主は女性。 動かない体を目いっぱい使って家事をしている。
3人家族にしては建物は大きいはずだが、物を取ったりしまったりできる範囲が限られているので、
歩く隙もないほど床に散乱しており、とても狭いし暗いという印象を持つような状態だった。
彼女はすでに車椅子を併用しての生活を余儀なくされている。
けれど、この状態の家だ。 懸命に杖を突き家の中を移動する。

今回の依頼はやって欲しいこと、やりたいことは山のようにある・・・
けれど、予算には当然限りがある。目的を最小限に搾ることにした。 2つだ。
今回の場合、やらねばならないことは、床を車椅子が使える状態にすることと、
彼女自身で出来る収納方法を考え、できるだけ自立をした生活をすることだった。
築が古いので補強も頭に入れての計画である。

【プラン第一歩】
動線だ。ベットからトイレ、キッチン、風呂、洗濯、収納・・
どんな生活スタイルをしていくか・・・、でも、あまり今までのスタイルを変更できないので、
今現在やりにくいとされていることの解決ができる動線を考える。
また、出来るだけ自立した生活を送れるようにする。

【プラン第二歩】
補強を兼ねた収納庫の計画。
車椅子に座ってできる範囲に彼女が出来る収納箇所を集中させる。
ホコリなどの問題もあるが、扉はつけない、全てオープン形式。

【プラン第三歩】
床材の選定。その他、材料の選定。
床材は、最近感覚を失いかけている足のために素足で床を踏みしめるというトレーニングをしているので、
少々値が張るのだが、コルクタイルを選んだ。
これであれば、車椅子であっても耐久性もあるし、クッション性、断熱性にも優れている。
収納の為には少々通気の悪い家なので、壁は桐で納めた。
吸放出もするし、多少の断熱効果もあるはずである。
後は面で躯体の補強をしていくように組み上げるだけである。

こうして、1ヶ月ほどの施工で、床はフラットになった。
一部は高さをあわせる為に緩やかなスロープとなっているが、歩行や車椅子での移動には支障がない。
収納もこれは誰の場所と収納の位置を決めてしまい、物の収まり場所を決めてしまった。
まだまだ、全てを片付けるところまでは行かないのだが・・・・。

自分で洗濯物をキャスターのついた物干しにハンガーで干し、居室と床をフラットにして作ったデッキに押して行く。
1日が終われば、それをそのまま部屋にもってきて、それぞれの家族の収納場所にハンガーごと掛ける。
・・・・・これが自分で出来るようになった。
このことがうれしいらしく、洗濯がこんなに楽しいものだとは思わなかったという。
キッチンも予算の関係で取り替えるわけには行かないので、
扉を一部取り払い、ニースペースを作った。
片手に杖、、片手で調理を起用にしていた彼女だが、椅子に座って両手で調理が出来るという。
生きることがこんなにも楽しいとは思わなかったという言葉をいただいた。
ケアマネージャーやヘルパーさん、工務店の皆さんの手助けがあって始めて出来上がったものではあるが、
設計者としてこれほどうれしい言葉はないと思う。

設計をしていて、いつも思うことなのだか、常にその人の生活がより良くなる様にと思って設計をしていても、
本当に喜んでもらえているのか?本当に便利に出来ているのか?
・・・そんな気持ちをいつも後ろに抱えている。 
決して自信がないとか、そんなことではないのだが、これが良いと思っていても、
つい独りよがりだったりしてないかの反芻をしてしまう。
でも、喜んでもらえる結果が出たときほど、うれしいものはない。
それがたとえ、大変な施工でいろいろ困難があったとしても・・・・だ。
単純だろうか? 

今回、改めて認識させられたこと。
”これは無理”と思わないこと。 当然、出来ないこともあるけど・・・。
けれど、出来うる限りの知恵を絞ることだ。それがきっと設計者としての義務だろう。
そして、出来うれば施工者もともに知恵を絞ってもらえれば、
より良い住宅を残していけると思うのです。


 
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