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 家づくり体験コラム


 『9坪の家 その後』 written by 萩原修


 09 2001/05/07 「家庭内競合の本づくり」


かみさんが本を書いた。
『9坪ハウス狂騒曲』(マガジンハウス)というタイトルだ。
女施主として、家づくりでわかったことや、家の住み心地などを面白おかしく綴っている。
もちろん、施主の立場で、家づくりのことについて書いた本は、何冊もある。
例えば、赤瀬川原平の『我輩は施主である』(読売新聞社)。
服部真澄の『骨董市で家を買う』(中央公論社)。
そして、荻原博子の『職人を泣かせて建てた300年住める家』(角川書店)といったところだ。
でも、夫婦そろって、同じ家のことを、別々に本にするなんて、はじめてかもしれない。
それに、紹介した3冊の著者は、みんなもともと「もの書き」だけど、ぼくら夫婦は、「普通のサラリーマン」と
「普通の専業主婦」で、文章を書いて生計を立てているわけではない。
この家を建てなかったら、一生、本を書くことなんてなかったかもしれない。

“9坪ハウスモニター”の記  『9坪ハウス狂騒曲』
「これまで最小限の住まいだの、最小限の暮らしだのを
 想定したことなんて一度もな かった。
 家というのは床面積が広ければ広いほど豊かだと
 信じていたから、・・・」。
たぶん萩原修さんの奥様、萩原百合さんじゃなくたって、
一家4人の家として 9坪の家を建てる、と言われたら、
そう思うに違いない。
「それなのに。ああ、それなのにそれなのに」
9坪の家を建ててしまった女主人。
夫の知り合いの有名評論家は“実験住宅における
実験生活の試み”という文章を発表する。
すると百合さんはこう反応する。
「私たちの家は“実験住宅”なのか。
私は日々“生活を実験している”のか・・・」。
そして・・・、「9坪ハウスモニター」として暮らそうと、開き直る。
夫の修さんの本も相当面白かったが、どこかシニカルな
発想をする女主人が書いたこの本は、2ぺ―ジに1回笑える。
これは少なめに見積もっての計算だ。
読んで、ウソだと思う方は、すまいとの掲示板で
抗議していただきたい。
“9坪ハウスモニター”の記  『9坪ハウス狂騒曲』
『9坪ハウス狂騒曲』
萩原百合・著
マガジンハウス 本体価格/1400円

そもそも、かみさんに「本でも書いたら」と言ったのは、ぼくである。家づくりがスタートしたばかりのころだった。
もともと、かみさんは、ぼくが言うのもおかしいけれど、文章を書くのが好きだし、うまかった。
1952年の名作「増沢邸」の骨格が展覧会に再現され、その柱梁をひきとり、土地を探し、家をつくるなんて、
けっこうおもしろそうな話である。文章にしない手はない。
本になるかは別にしても、記録としては、残しておいてもいいのではないかと思った。
残念ながら、ぼくには文才がない。
そこで、かみさんに家づくりのことを本にすればとすすめたのだ。
かみさんは、不動産屋をまわりながら、熱心にメモをとったり、不動産の資料を保存したりしていた。
しかし、設計が煮詰まってきたころから、それどころではなくなってきた。
目の前の家づくりが精一杯で、それを記録に残そうなどという余裕がなくなってきたのだ。
その後、家ができあがり、多くの雑誌やテレビの取材があり、引越したばかりであわただしいこともあり、
家づくりのことを本にする話はすっかり、どこかに忘れていた。
そんなとき、ぼくが知り合いに編集者に、たまたま自分の家づくりの話をした。
その編集者は、「それは、おもしろいから、ぜひ本にして欲しい。出しましょう」と言う。

すっかり、乗せられたぼくは、うかつにも文才がないことも忘れて、「じゃあ、書いてみようかな」と思ってしまった。
ぼくが本を書くことになって、怒ったのはかみさんだった。「私が書くはずじゃなかったの」。
その頃、かみさんも少しずつ文章を書き始めていたのだ。
でも、出版が決まっているわけではないので、執筆はなかなかすすまなかった。
その後は、家庭内競合状態。
一台のパソコンで、かみさんは昼間、ぼくは夜の二毛作である。
こうして、昨年11月にぼくの本が、今年4月にかみさんの本が無事出版された。
違う出版社からでているあたりが、なんとも変だ。
どちらの本がおもしろいか。ぜひ、読みくらべて、感想などいただけるとうれしい。

表札を兼ねるポスト
「“表札なし”“インターフォンなし”“ポストあり”のワケ」
表札を兼ねるポスト
同じ家のことなのに、女性の施主から書かれた内容は、
9坪の家の細かな生活のディテールがよくわかる。
例えば、「“表札なし”“インターフォンなし”“ポストあり”のワケ」
の項に書いてあるのは、9坪の家の表札を兼ねるポストのこと。
透明プラスチック製で、中に家族4人の写真と名前が入っている。
デッキのある居間とは反対側の外壁に掛かっている。


 
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