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 『9坪の家フォーラム』 written by 萩原修&萩原百合


 010 「塀」


百合さん 修さん フォーラム
境界をなくす試み  
見晴らしのいい場所を求めて、ようやく探しあてた土地。
西に隣接する2階建てアパートの周りには、すでに立派なフェンスが立っていた。
当時、土地の境界をはっきり示していたのは、この西側のフェンスだけだった。

何とか家を建てる場所が決まり、周りの状況が見えるようになってからは、
建物に関して話し合わなければならないことがめじろ押し。
正直言って、敷地の周りをどうするかなんて、考えもおよばなかった。

敷地前方には、人通りの少ない道路が一本よこたわっていて、
その先は緑が広がっている。
モミジ、ツバキ、ハナミズキ、月桂樹、ケヤキ、その他もろもろ。
樹木の間をぬうように、鳥たちが飛びかっている。
日没近くなると、西の空が、徐々に夕焼け色に変化していく様が見える。
借景が大いに期待できる立地。
塀やフェンスといった障壁を、わざわざこの地に立てるなんて、ナンセンス。


そんなふうに思えたのは、大きな開口部を特徴とする家が、
私たちにすでに用意されていたからだろう。
間口2間分の窓を通して、家の内側に取り込まれる風景を見る時、
単に境界をつくる目的で立てられたフェンスは、何とも味気なく思えて仕方ない。
いつしか、既存の西側フェンス沿いには、
ツル性植物連合軍が競ってツルをのばすようになっていた。

外に向かって開かれた家に暮らすようになってから、
どうしたら家の『内』と『外』とがいい関係でいられるかを、
常に意識して考えるようになった。
どこからどこまでが外で、どこからどこまでが内なのか。
家が建つ敷地と外界との境目を、視覚的に識別できるように
壁をつくる意味は、一体どこにあるのだろう。

ふと、声のする方を向いてみると、ケンタロウくんが庭にしゃがみこんで、
タンポポの綿毛に息を吹きかけている姿が目に入る。
回覧板を手にやってくるF村さんは、用事が済むとそのまま敷地内を通り、
北に抜けて帰っていく。

新緑の今、スミレアオイハウスの庭では、シロツメクサがわさわさと道路にまで
ランナーをのばし始めた。
道との境界がわからなくなる日は、もう、すぐそこまで来ている。

境界をなくす試み



西側のフェンス


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