|
見晴らしのいい場所を求めて、ようやく探しあてた土地。
西に隣接する2階建てアパートの周りには、すでに立派なフェンスが立っていた。
当時、土地の境界をはっきり示していたのは、この西側のフェンスだけだった。
何とか家を建てる場所が決まり、周りの状況が見えるようになってからは、
建物に関して話し合わなければならないことがめじろ押し。
正直言って、敷地の周りをどうするかなんて、考えもおよばなかった。
敷地前方には、人通りの少ない道路が一本よこたわっていて、
その先は緑が広がっている。
モミジ、ツバキ、ハナミズキ、月桂樹、ケヤキ、その他もろもろ。
樹木の間をぬうように、鳥たちが飛びかっている。
日没近くなると、西の空が、徐々に夕焼け色に変化していく様が見える。
借景が大いに期待できる立地。
塀やフェンスといった障壁を、わざわざこの地に立てるなんて、ナンセンス。
そんなふうに思えたのは、大きな開口部を特徴とする家が、
私たちにすでに用意されていたからだろう。
間口2間分の窓を通して、家の内側に取り込まれる風景を見る時、
単に境界をつくる目的で立てられたフェンスは、何とも味気なく思えて仕方ない。
いつしか、既存の西側フェンス沿いには、
ツル性植物連合軍が競ってツルをのばすようになっていた。
外に向かって開かれた家に暮らすようになってから、
どうしたら家の『内』と『外』とがいい関係でいられるかを、
常に意識して考えるようになった。
どこからどこまでが外で、どこからどこまでが内なのか。
家が建つ敷地と外界との境目を、視覚的に識別できるように
壁をつくる意味は、一体どこにあるのだろう。
ふと、声のする方を向いてみると、ケンタロウくんが庭にしゃがみこんで、
タンポポの綿毛に息を吹きかけている姿が目に入る。
回覧板を手にやってくるF村さんは、用事が済むとそのまま敷地内を通り、
北に抜けて帰っていく。
新緑の今、スミレアオイハウスの庭では、シロツメクサがわさわさと道路にまで
ランナーをのばし始めた。
道との境界がわからなくなる日は、もう、すぐそこまで来ている。
|