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社宅住まいの時から、というのは私が4歳頃のことだが、
食事する時はいつも長方形の木のテーブルを家族が囲んでいた。
椅子の数は4脚。きっかり家族の人数分、色も大きさもまったく同じものが、
対面するようにふたつずつ並んでいた。
こどもの私が大人のように座ると、足は床に届かないし、
テーブルの上に並んでいる食べ物にも距離があって、うまいこと手が届かない。
結局、椅子の上に正座して食べるという状況が、しばらく続いたのだった。
座面が赤のパイル地でおおわれた椅子は、
そこに座ると、決まってじんましんが出た時のような『あと』がついた。
食事を終えて立ち上がると、座面にあたっていた足の部分に、
まるで判子を押したようにボツボツの『あと』がもれなくついてくる。
何て硬くて痛い椅子なんだろうと、子どもながらに思うのだった。
就職のため単身上京して数年後、千歳烏山のアパートでの生活が
スタートしたのを機に、私は椅子とテーブルを買うことにした。
それまで6畳一間の生活だったが、
新たな住まいは、床がフローリングの洋風の部屋。
その部屋に、どうしても、椅子とテーブルを置きたくなったのだ。
黒い鉄パイプの椅子と、天板が大理石の丸テーブル。
まるで、当時はやっていた『カフェバー』に置いてあるような代物を、私は選んだ。
椅子の形や材質が好みだったから、という理由だけで。
それからさらに時を経て、
ひょんなことからスミレアオイハウスを建てることになった。
さて、この家にはどんな食卓が似合うだろう。
そんな思いで家の中を想像してみるのだが、
どう考えても、部屋全体が木で覆われた部屋に、
黒い鉄パイプと大理石は合いそうもない。
私たち一家は、青山あたりの家具屋に行って、椅子の調査をした。
実際に座ってみたり、なでたり匂いを嗅いだり、いろいろ試してみた。
そんなことを何度か繰り返すうちに、ふと思った。
食卓用の椅子は、椅子そのものを見てどうかということだけでなく、
使う人との関係、テーブルとの関係、床との関係、部屋全体との関係など、
トータルに考えて選ぶものではないか、と。
いくら見た目がよくても、実際に腰掛けてみると、
座り心地の悪い椅子というのがある。
それはちょうど、靴や洋服を買う時に似ている。
ディスプレイされた靴を見て、「あ、これ素敵だな」と思っても、実
際はいてみると窮屈だったり、何となくしっくりこなかったり。
椅子も同様で、使う人のサイズや、使う場面を考えて選ばないと、
使いづらいものになってしまうのではないか。
形も大事な要素ではあるけど、人が使うものだから、まずはその人自身、
そして何よりそこでの生活に合ったサイズであることが第一。
ちょうどいい頃合いのものを、選んで使いこなしていきたいと思っている。
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