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 家づくり体験コラム


 『9坪の家フォーラム』 written by 萩原修&萩原百合


 011 「椅子」


修さん 百合さん フォーラム
食事の時の椅子
食事の時の椅子



テーブルとの関係





床との関係





使う人との関係


社宅住まいの時から、というのは私が4歳頃のことだが、
食事する時はいつも長方形の木のテーブルを家族が囲んでいた。
椅子の数は4脚。きっかり家族の人数分、色も大きさもまったく同じものが、
対面するようにふたつずつ並んでいた。
こどもの私が大人のように座ると、足は床に届かないし、
テーブルの上に並んでいる食べ物にも距離があって、うまいこと手が届かない。
結局、椅子の上に正座して食べるという状況が、しばらく続いたのだった。

座面が赤のパイル地でおおわれた椅子は、
そこに座ると、決まってじんましんが出た時のような『あと』がついた。
食事を終えて立ち上がると、座面にあたっていた足の部分に、
まるで判子を押したようにボツボツの『あと』がもれなくついてくる。
何て硬くて痛い椅子なんだろうと、子どもながらに思うのだった。

就職のため単身上京して数年後、千歳烏山のアパートでの生活が
スタートしたのを機に、私は椅子とテーブルを買うことにした。
それまで6畳一間の生活だったが、
新たな住まいは、床がフローリングの洋風の部屋。
その部屋に、どうしても、椅子とテーブルを置きたくなったのだ。
黒い鉄パイプの椅子と、天板が大理石の丸テーブル。
まるで、当時はやっていた『カフェバー』に置いてあるような代物を、私は選んだ。

椅子の形や材質が好みだったから、という理由だけで。

それからさらに時を経て、
ひょんなことからスミレアオイハウスを建てることになった。
さて、この家にはどんな食卓が似合うだろう。
そんな思いで家の中を想像してみるのだが、
どう考えても、部屋全体が木で覆われた部屋に、
黒い鉄パイプと大理石は合いそうもない。

私たち一家は、青山あたりの家具屋に行って、椅子の調査をした。
実際に座ってみたり、なでたり匂いを嗅いだり、いろいろ試してみた。
そんなことを何度か繰り返すうちに、ふと思った。
食卓用の椅子は、椅子そのものを見てどうかということだけでなく、
使う人との関係、テーブルとの関係、床との関係、部屋全体との関係など、
トータルに考えて選ぶものではないか、と。

いくら見た目がよくても、実際に腰掛けてみると、
座り心地の悪い椅子というのがある。
それはちょうど、靴や洋服を買う時に似ている。

ディスプレイされた靴を見て、「あ、これ素敵だな」と思っても、実
際はいてみると窮屈だったり、何となくしっくりこなかったり。
椅子も同様で、使う人のサイズや、使う場面を考えて選ばないと、
使いづらいものになってしまうのではないか。

形も大事な要素ではあるけど、人が使うものだから、まずはその人自身、
そして何よりそこでの生活に合ったサイズであることが第一。
ちょうどいい頃合いのものを、選んで使いこなしていきたいと思っている。



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