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2004年2月 「革小物」
それまで、革製品には近よりがたい何かを感じていた。
革でできたものは高級品、
どちらかと言うと「非日常に使うもの=よそゆき」
というイメージが、私にはあった。

革製の靴やバッグは、持ってはいるけど
じゃんじゃん使うこともない。
しかるべき時に出してきて、ちびちび使う、
とまぁ、その程度である。

ところが、齋藤義幸氏に出会ってからは、
革製のモノが、家のあちこちに登場するようになり、
いつしか、革という素材を身近なものとして感じるようになっていた。

彼が生み出す革小物には
日常の暮らしのなかで、ごくフツウに使える道具が多い。
長いコードを、クルリンひとまとめにしてくれるケーブルホルダー、
ケーブルホルダー カオ

足にぴったりフィットする、心地いいスリッパ、
足にぴったりフィットする、心地いいスリッパ

お出かけ時には必須の、巻き巻きペンケースなどなど、
見えるところに置きたくなったり、
一度使い出すと、どうにも手放せなくなってしまうという、
まことに不思議な魅力をもったモノなのである。
もちろん、齋藤義幸なる人物その人が
不思議な魅力にあふれているのは、言うまでもない。

今月の9スタは、
そんな、働き者の革小物を日夜デザイン製作しつつ
営業から納品まで、ひとりでこなすマルチな革男・齋藤義幸氏をご紹介。

さ〜てと。
どんな話が飛び出すことやら。。。



齋藤 義幸/CYPRODUCT(サイプロダクト)
さいとう よしゆき
cyproduct(サイプロダクト)
〒354-0004 埼玉県富士見市下南畑1167-1
TEL: 049-268-1630 FAX: 049-268-1652
mail
1966年福岡県生まれ。
日本デザイン専門学校工業工芸デザイン科卒。
1999年よりオリジナル商品の企画(cyproduct) を始める。





久しぶりの齋藤邸。
またしても、小雨そぼふる寒い日であります。

齋藤邸

確か、しめ飾りに必要なワラ調達に伺った際も、
かような天気でありました。

そして、今回もまた、あの時と同じく

炎の料理人・齋藤義幸氏

齋藤義幸氏は、炎の料理人として台所に立ったのであります。


※編集注:文字色は、■齋藤さん ■百合さん ■その他
齋藤さんの料理
「ほぇぇ、いい香り〜。
齋藤さんの料理、たのしみたのしみ」
「きょうはね、炒めもの2品と野菜と豚肉の煮物、
それから、土鍋ごはん」
おいしそう。
「煮物は<鰹だし>だね。
おいしそう。
では、ごちそうになりまーす」
音楽にも詳しい
「ん? 何か足りないと思ったら、
音楽がかかってないや」
「しかし、CDいっぱい持ってるよねぇ。
齋藤さんは、本をよく読んでるけど
音楽にも詳しいよね」
「ま、いろんなジャンルのものを。
CDは、2階の仕事場にもいっぱいあるよ」
「そうじゃった、そうじゃった。
きょうは、齋藤さんが作業している姿も
ばっちり見せてもらいますよってに」
「ま、まずは食べて、お茶して…。
あとで、ゆっくりね」

「あ。ポリサイト絵本展に出していた革の絵巻物だ。
齋藤さんは、オリジナル商品を製作しつつ、
折を見て、こういった新しい試みにも
どんどん挑戦してるよね」
革の絵巻物
「一度、聞きたかったの。
そもそも、何で革なのかっていう、
そのあたりの話…」
「ん〜、何で革なのか。
中学の時、剣道を始めたのが、
革との出会いではあるんだけど」
革との出会い
「ほら、剣道の道具には、革がたくさん使われてるでしょう」
「なるほど。その頃は毎日のように、
体中で革の感触を味わっていたわけだ」
「あとね、なめした革の匂いとか手触りが
好きっていうのもあるかな」
なめした革の匂いとか手触り
「確か、フリーになる前は、
会社に勤めてたんだよね」
「そうそうそう。
ハンドバッグの製造メーカーで、
バッグの試作品を作ってた」
バッグの試作品を作ってた
「会社だと、どうしても制約が多いんだよね。
使いたい素材が使えない、なんてこともあるし。
ボクは、職人じゃないから『ハイ、これでつくってネ』って
決められた素材を渡されて、
言われた通りにつくるっていうのは、どうもね…」
会社だと、どうしても制約が多い
「仕事がくるのを、ただひたすら待つんじゃなくて、
自分からアイデアを出して、デザイン、製作する。
そんなふうに仕事を進めていきたいんだよね。
もちろん、試作ができたら店に持っていって
プレゼンもするし、交渉もする。
そういったもろもろのことを、
自分でコントロールしながらやっていきたいなぁと
思うようになって、3年前に独立したんだ」
自分でコントロールしながらやっていきたいなぁ
「ハタから見ると、好きなものばっかり作ってるように
見えるらしいんだけど、そんなことはなくてね。
作家ってわけでもないし」
「フリーにはフリーの、
会社とは違った大変さがあるんだろうね。
とくに、齋藤さんは営業から納品まで
すべてひとりでやってるものね」
仕事机
「デザインして製作するだけじゃなく、
自身の足を使って都内を渡り歩き、
人と交渉して、注文受けて、
合間にカフェでケーキセットをたいらげ、
素敵な女性と談笑し…って、イソガシソウ!(笑)
しかし、その半端じゃない行動力が、
実際、結果につながってる。
今やcyproduct製品を扱うお店が、あちこちにあるもの」
今やcyproduct製品を扱うお店が、あちこちにある
「国立のこいずみ道具店にお茶の水の美篶堂、
表参道のスパイラル、原宿のアシストオン…」
「そういえば、独立して初めて営業に行ったのは、
六本木のリビングモチーフ
マウスパッドを持っていったんだよねぇ」
マウスパッド

や、これは?

cyproduct製スリッパの金型

何気に、リビングルームにころがっていた金属製の器具。
一瞬、ネズミ捕りかと思ったが、
よくよく見ると、何だか見覚えのあるカタチ…。
そうだ、これは私の大のお気に入り、
cyproduct製スリッパの金型じゃ〜あ〜りませんか!

ということで、
ようやく重いお腹(!)を上げて、2階の作業場を案内してもらうことになりました。

革漉き包丁で切っていく
「あの金型を使って、スリッパの形に革を抜いていくわけね」
「そうそう。
一番最初、試作の段階ではまず型紙を作って、
革漉き包丁で切っていくんだけどね」
長いのから、えらい短いものまで、いろいろ
「これが革を切る包丁なの?
長いのから、えらい短いものまで、いろいろあるんだねぇ」
使っては研いで
「あぁ、これはネ、
使っては研いでっていうのをくり返すうちに
こんなに短くなったの。」
「なるほど。
使いこまれた道具ってわけね」
金型で抜いたら、ミシンがけ
「あ。スリッパの素がいっぱい!」
「金型で抜いたら、ミシンがけ。
結構ね、スリッパ製作には時間がかかるんですよ」
ケーブルホルダーの金型
「ケーブルホルダーの金型だ!
おもしろーい」
ギボシをつけて、ニスを塗ったらできあがり
「ギボシをつけて、ニスを塗ったらできあがり。」
「そう言えば、ケーブルホルダーはミシンを使わないんだ」
ハンマー
「これ、何に使うの?」
「あぁ、それはのりづけする時に使うんだけど、
バッグ用の道具は、結構重くてね。
右にある、彫金用のハンマーを使ってる」
ロゴマークを入れる時の機械
「ミシン以外の機械もあるようだけど」
「これは、ロゴマークを入れる時の機械」
革漉き機
「こっちは、革漉き機」
「かわすきき?」
「そう。
革の厚みを調整する時に使うの」
「ほほぅ…」
曲面も縫えるミシン
「ミシンもいろいろあるけど、何か違いでもあるの?」
「こっちのミシンはね、曲面も縫えるんですよ。
テーブルを置くと、平面も縫える」
実演
「さすが、プロの腕は違う。
うまい!(なんて言っちゃ失礼か?)」
そう何度も失敗はできないよ
「何でもそうだけど、
始めたばかりのころは、こんなふうにはできなかったよ。
バッグの試作品を何度も作っているうちに、段々とね」
「私なんぞ、ミシンがけをした日にはやり直してばかり。
トホホ…」
「扱う素材が、革だからねぇ。
そう何度も失敗はできないよ」
縫い目が蛇行しちゃったら商品にならない
「やっぱり、『飲んだら、やるな』ですかね?」
「そうだねぇ。縫い目が蛇行しちゃったら
商品にならないもの」
「そりゃそうだ…」






「プラモデルをつくる時のように、製作の過程は楽しい。
どんなものをつくろうかと、完成後のカタチを考えることも、同じくらい楽しい」
と齋藤さんは言う。

「でも、同じことをくり返すのは嫌なんだよね。
予測できることって、つまらないから。
そういった意味では、異業種の人たちと交流して新しいことを考えるのは、
すごくおもしろいことなんだ」

cyproduct(サイプロダクト)

「循環する構造のなかで、仕事をしていきたい」
そんな思いをこめて名づけたcyproduct(サイプロダクト)。
サイプロダクトの<サイ>は、
サイトウの<サイ>であり、cycleの<cy>でもある。

無限大(∞)を連想させるロゴマークからは、
まさに、齋藤義幸氏と多種多様な人々とのつながり、
モノづくりへの、無限の可能性が感じられる。
固定されない、変幻自在の輪は、
これから、どんどん広がっていくのだろう。



手料理をごちそうになり、
お茶をいただき、
製作工程の実演、
そして、マリアカラスを聞きながらのインタビュー…。

あぁ、約6時間もの長居をしてしまった。
すっかり日没、
まだまだ冷たい雨が降っている。

気がつけば、齋藤さんは寒さの中、何のためらいもなく外に飛び出し、
タクシー求めて、ひた走るのであった。
わたしゃ、あらためて齋藤さんの人としてのやさしさを
しみじみ感じたですよ。

(:(工);)ノ~''

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