それまで、革製品には近よりがたい何かを感じていた。
革でできたものは高級品、
どちらかと言うと「非日常に使うもの=よそゆき」
というイメージが、私にはあった。
革製の靴やバッグは、持ってはいるけど
じゃんじゃん使うこともない。
しかるべき時に出してきて、ちびちび使う、
とまぁ、その程度である。
ところが、齋藤義幸氏に出会ってからは、
革製のモノが、家のあちこちに登場するようになり、
いつしか、革という素材を身近なものとして感じるようになっていた。
彼が生み出す革小物には
日常の暮らしのなかで、ごくフツウに使える道具が多い。
長いコードを、クルリンひとまとめにしてくれるケーブルホルダー、
足にぴったりフィットする、心地いいスリッパ、
お出かけ時には必須の、巻き巻きペンケースなどなど、
見えるところに置きたくなったり、
一度使い出すと、どうにも手放せなくなってしまうという、
まことに不思議な魅力をもったモノなのである。
もちろん、齋藤義幸なる人物その人が
不思議な魅力にあふれているのは、言うまでもない。
今月の9スタは、
そんな、働き者の革小物を日夜デザイン製作しつつ
営業から納品まで、ひとりでこなすマルチな革男・齋藤義幸氏をご紹介。
さ〜てと。
どんな話が飛び出すことやら。。。
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さいとう よしゆき |
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cyproduct(サイプロダクト) |
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〒354-0004 埼玉県富士見市下南畑1167-1 |
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TEL: 049-268-1630 FAX: 049-268-1652 |
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mail |
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1966年福岡県生まれ。
日本デザイン専門学校工業工芸デザイン科卒。
1999年よりオリジナル商品の企画(cyproduct) を始める。 |
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久しぶりの齋藤邸。
またしても、小雨そぼふる寒い日であります。
確か、しめ飾りに必要な
ワラ調達に伺った際も、
かような天気でありました。
そして、今回もまた、あの時と同じく
齋藤義幸氏は、炎の料理人として台所に立ったのであります。
「あ。ポリサイトの絵本展に出していた革の絵巻物だ。
「齋藤さんは、オリジナル商品を製作しつつ、
「折を見て、こういった新しい試みにも
「どんどん挑戦してるよね」 |
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「一度、聞きたかったの。
「そもそも、何で革なのかっていう、
「そのあたりの話…」
「ん〜、何で革なのか。
「中学の時、剣道を始めたのが、
「革との出会いではあるんだけど」 |
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「ほら、剣道の道具には、革がたくさん使われてるでしょう」
「なるほど。その頃は毎日のように、
「体中で革の感触を味わっていたわけだ」
「あとね、なめした革の匂いとか手触りが
「好きっていうのもあるかな」
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「確か、フリーになる前は、
「会社に勤めてたんだよね」
「そうそうそう。
「ハンドバッグの製造メーカーで、
「バッグの試作品を作ってた」
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「会社だと、どうしても制約が多いんだよね。
「使いたい素材が使えない、なんてこともあるし。
「ボクは、職人じゃないから『ハイ、これでつくってネ』って
「決められた素材を渡されて、
「言われた通りにつくるっていうのは、どうもね…」 |
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「仕事がくるのを、ただひたすら待つんじゃなくて、
「自分からアイデアを出して、デザイン、製作する。
「そんなふうに仕事を進めていきたいんだよね。
「もちろん、試作ができたら店に持っていって
「プレゼンもするし、交渉もする。
「そういったもろもろのことを、
「自分でコントロールしながらやっていきたいなぁと
「思うようになって、3年前に独立したんだ」
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「ハタから見ると、好きなものばっかり作ってるように
「見えるらしいんだけど、そんなことはなくてね。
「作家ってわけでもないし」
「フリーにはフリーの、
「会社とは違った大変さがあるんだろうね。
「とくに、齋藤さんは営業から納品まで
「すべてひとりでやってるものね」 |
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「デザインして製作するだけじゃなく、
「自身の足を使って都内を渡り歩き、
「人と交渉して、注文受けて、
「合間にカフェでケーキセットをたいらげ、
「素敵な女性と談笑し…って、イソガシソウ!(笑)
「しかし、その半端じゃない行動力が、
「実際、結果につながってる。
「今やcyproduct製品を扱うお店が、あちこちにあるもの」
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や、これは?
何気に、リビングルームにころがっていた金属製の器具。
一瞬、ネズミ捕りかと思ったが、
よくよく見ると、何だか見覚えのあるカタチ…。
そうだ、これは私の大のお気に入り、
cyproduct製スリッパの金型じゃ〜あ〜りませんか!
ということで、
ようやく重いお腹(!)を上げて、2階の作業場を案内してもらうことになりました。
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「あの金型を使って、スリッパの形に革を抜いていくわけね」
「そうそう。
「一番最初、試作の段階ではまず型紙を作って、
「革漉き包丁で切っていくんだけどね」 |
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「これが革を切る包丁なの?
「長いのから、えらい短いものまで、いろいろあるんだねぇ」
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「あぁ、これはネ、
「使っては研いでっていうのをくり返すうちに
「こんなに短くなったの。」
「なるほど。
「使いこまれた道具ってわけね」 |
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「あ。スリッパの素がいっぱい!」
「金型で抜いたら、ミシンがけ。
「結構ね、スリッパ製作には時間がかかるんですよ」 |
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「ギボシをつけて、ニスを塗ったらできあがり。」
「そう言えば、ケーブルホルダーはミシンを使わないんだ」 |
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「これ、何に使うの?」
「あぁ、それはのりづけする時に使うんだけど、
「バッグ用の道具は、結構重くてね。
「右にある、彫金用のハンマーを使ってる」 |
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「ミシン以外の機械もあるようだけど」
「これは、ロゴマークを入れる時の機械」 |
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「こっちは、革漉き機」
「かわすきき?」
「そう。
「革の厚みを調整する時に使うの」
「ほほぅ…」 |
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「ミシンもいろいろあるけど、何か違いでもあるの?」
「こっちのミシンはね、曲面も縫えるんですよ。
「テーブルを置くと、平面も縫える」 |
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「さすが、プロの腕は違う。
「うまい!(なんて言っちゃ失礼か?)」 |
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「何でもそうだけど、
「始めたばかりのころは、こんなふうにはできなかったよ。
「バッグの試作品を何度も作っているうちに、段々とね」
「私なんぞ、ミシンがけをした日にはやり直してばかり。
「トホホ…」
「扱う素材が、革だからねぇ。
「そう何度も失敗はできないよ」 |
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「やっぱり、『飲んだら、やるな』ですかね?」
「そうだねぇ。縫い目が蛇行しちゃったら
「商品にならないもの」
「そりゃそうだ…」 |
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「プラモデルをつくる時のように、製作の過程は楽しい。
どんなものをつくろうかと、完成後のカタチを考えることも、同じくらい楽しい」
と齋藤さんは言う。
「でも、同じことをくり返すのは嫌なんだよね。
予測できることって、つまらないから。
そういった意味では、異業種の人たちと交流して新しいことを考えるのは、
すごくおもしろいことなんだ」
「循環する構造のなかで、仕事をしていきたい」
そんな思いをこめて名づけたcyproduct(サイプロダクト)。
サイプロダクトの<サイ>は、
サイトウの<サイ>であり、cycleの<cy>でもある。
無限大(∞)を連想させるロゴマークからは、
まさに、齋藤義幸氏と多種多様な人々とのつながり、
モノづくりへの、無限の可能性が感じられる。
固定されない、変幻自在の輪は、
これから、どんどん広がっていくのだろう。
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手料理をごちそうになり、
お茶をいただき、
製作工程の実演、
そして、マリアカラスを聞きながらのインタビュー…。
あぁ、約6時間もの長居をしてしまった。
すっかり日没、
まだまだ冷たい雨が降っている。
気がつけば、齋藤さんは寒さの中、何のためらいもなく外に飛び出し、
タクシー求めて、ひた走るのであった。
わたしゃ、あらためて齋藤さんの人としてのやさしさを
しみじみ感じたですよ。
(:(工);)ノ~''