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2004年10月 「どこでもドア」

「実家の壁、ぶちぬくらしいよ」
突然、物騒な話が舞いこんできた。
「なにそれ? 聞いてないヨ〜」

ガセネタかもしれない。さっそく、電話で確認することに。
「さすが早いですねぇ、情報が」
なんと。母は笑いながら、それを認めた。

実家の壁、ぶちぬくらしいよ

ん〜、ナンタルチア!
両親の家を増築ならぬ減築工事したのは、つい2年前のこと。
母よ。なぜ、再び穴をあけようとする? なぜに、ぶちぬく?
おしえちくれー!

私は、とるものもとりあえず実家へと向かった。

五島 伸太郎/五島工務店
ごとう しんたろう
五島工務店 工務主任
鹿

初鹿野 功/デザインオフィス メイビー
はじかの いさお
デザインオフィス メイビー
商業施設・住宅・企画 設計 施工





今回のドア取りつけは
減築工事と同じく、ハジカノ&シンタロウのコンビで行うらしい。
そう、我が家の部屋づくりの時にもテキパキ活躍した、あの二人組です。

今から2年前、築40年の家はガッツリ半分解体された。



減築工事が終了したあと、今度は解体したところを整地して
弟家族の家が新しく建てられたのです。

弟家族の家

そして、弟の愛車を間に挟み、新しい家と古い家が並ぶことになった。
一見すると、デッキを通じて家がつながっているように見えるけど、

デッキを通じて家がつながっている

現在、このデッキを利用できるのは弟の家だけ。
ご覧の通り、両親の家の2階は壁。ドアがないんだもん。
つまり、今回はここにどこでもドアをつけるというわけであります。
だけど壁をぶち抜くなんて、簡単にできることかいな?


※編集注:文字色は、■ハジカノさん ■シンタロウさん ■百合さん ■その他
おはようございまーっす
「おはようございまーっす。
さっそくやってますね」

「あ、ごぶさたです。ごくろうさんです」
まずは、外壁から
「ここにドアをつけるんですよね。
まずは、外壁からですか」
「そうですね。
外と内側と、行ったり来たりしてやりますけど
まずは外から。
ハジカノさーん、『ツバにナマコをのせますかね?』」
「はぁ? 唾にナマコ? 載せる???」
踏み台
「どういう意味か、さっぱりわからんぞ。
ところでハジカノさん。なんですかそれ?」
「踏み台です。ドアの位置が高いから、デッキに置くの」
外壁をパキパキはがしていきます
「ぬりぬりしてる間も、シンタロウさんは慎重に
外壁をパキパキはがしていきます」
波板をとめていたネジをひとつひとつ取り外していく
「波板をとめていたネジをひとつひとつ取り外していくと
中に隠れていた透湿シートとコンパネが見えてきます」
ドアが届いた
「おお。ドアが届いた。サッシ屋さんでしょうか。
あのドアがここにつくのね」
「そうです。ごくろうさーん」
家の内側
「今度は、家の内側へ。ここは、階段を上がったところ」
「内側からは石膏ボードをはずして、
グラスウールをはがしていきます。
もともと、ここに部屋があったでしょう。
その時の出入り口が残ってますから」
「減築する時に、部屋はなくなっちゃったけど
出入り口は壁でふさいだだけ。
つまり、もう一度、出入り口を生かすってことなんだね」
ふたたび、外へ
「ふたたび、外へ。
お。かなり波板がはがれてきたぞ」
波板を切る専用のハサミ
「そのハサミ、おもしろいカタチしてますね」
「これね。波板を切る専用のハサミなんですよ」
「へ〜。そういう道具があるのか」
墨つぼ
「鶴と亀の彫り物が施してあるこれは?」
「いわゆる墨つぼですね。印をつける道具」
「ほぅ。随分、年期が入ってますね」
墨つぼ
「こうやって、カットするところに印をつけていくんです。
よく考えられてますよね。こういう道具って」
「ホントねぇ。これひとつで、
ピタッて、まっすぐな線が引けるんだものね」
そろそろ
「どう? そろそろ」
「そろそろですね」
壁に穴をあける
「お。いよいよ穴あけですね!
壁に穴をあけるって、なんかドキドキするなぁ」
外が見える見える
「うわぁ。ホントにあけちゃった!
外が見える見える。んー、妙な感覚」
固定
「ここまで来たら、完成も間近って感じ。
サッシの枠もぴったり合ってる。さすが!」

「ここに、補強を入れよう」
「だきあわせて、固定させていきますか」
「ん? 抱き合う?…」
ドアを両側からがっちり固定
「あんまり、柱の具合がよくないんです。
だから、ドアを両側からがっちり固定させるように
考えてるんですよ」
「なんたって、築40年だもんね。
あちこちガタがきてる。
人間と同じさね(つまり私と同じ)」

ここで、いったん昼休憩。
力をつけたところで、作業再開です。

「サッシの枠は、上からとめていきます」
サッシの枠
「桁を削るんですか」
「構造材だから、ホントはあんまりいじらないほうがいい。
ほどほどにします」
ほどほどに
「波板は、下からはっていくんだ」
「そう。下から」
「雨が降っても、水が入ってこないようにするためです」
波板は、下からはっていく
「あのぅ、さっきナマコをのせるって言ってましたよね。
ナマコはどこに…?」
「ああ、外壁に使ってるトタン板、
今はガルバリウム鋼板っていうけど、
以前はナマコトタンって呼んでたんですよ」
「ほぅ。鋼板の昔の名前はナマコですか…」
ガルバリウム鋼板
「シンタロウさんが、何やらじっと桁を見つめております」
桁
「そして、真新しい板を削りはじめ…」
真新しい板を削りはじめ…
「おぉ。そこに板をはめ込むんですね」
板をはめ込む
「板の角をちょちょっとカットして、
積み木のような木片に、それぞれ『左』『右』の文字を
入れる。
これは、いったい…?」
「楔を入れて、はめこんだ板を前の方に押してやる。
それから、敷居をのせていきます」
楔
「家の内側にはめこむ木枠は、
その場でつくられていきます。
うーん、すばらしいお手並み」
すばらしいお手並み
「重たいドアを持ち上げて、とりつけると…」
ドアをとりつける
「じゃじゃーん。完成!」
完成!
「と思ったけど、まだ何だか作業があるんですね」
「隙間を、コーティング処理します」
隙間を、コーティング処理
「マスキングテープをはがして、と。
これで完成ですね!」
マスキングテープをはがして
「と思ったら、まだだった。
ハジカノさん、そのやけに長いものはなに?」
そのやけに長いものは?
「壁紙です。
ご覧の通り、最近は簡単にはれるのがあるんですよ」
「内側の仕上げが済んだね。今度こそ、完成ですね」
壁紙
「あじゃー。シンタロウさん。
お風呂の手すりもたのまれてたんですか。
いろいろすんまそーん」
お風呂の手すり







ハジカノさんとシンタロウさんは、
ふたりなんだけど、ひとり。
主に、現場に立って作業するのがシンタロウさん。
ハジカノさんは、サッシをガラス屋さんに発注するなど、
事前の下見をしたうえで工事に必要な材料を的確に選び、
手配するのが主な役回り。
当日、いかに段取りよく進行できるかを考える、
まさに、ダンディなダンドリー(段取り)なのです。

施工する人のことがわかっているからこそ、
ハジカノさんは、その場にぴったりのモノを探し出す。
そして、シンタロウさんは気持ちよくカタチに変えていくことができる。
まさに息の合った、絶妙なコンビです!

どこでもドア完成

どこでもドアができて数日後、
スミレとアオイが実家に泊まりに行きました。
みんな、どんな様子だった?って聞いてみると…。

ス「すごーく、よく使ってたよ。
ス「いちいち靴にはきかえなくていいから便利だし、
ス「起きてるかどうかも、ドアをあければすぐわかるしね」
ア「きょうも、お昼に焼そばつくったよーって
ス「持っていってた。
ス「前より、ラクに行けていいよ。うん」

弟夫婦には、9月に3人目の子ども・あんずちゃんが生まれたばかり。
「もう、大助かりなんですよ〜」
電話口で、あんずママが言った。
そうか。かべぶちぬき大作戦が決行されたのは
そういう事情があったからなのか!

これからは、ドアをあけての移動はもちろんのこと、
デッキでひなたぼっことか、デッキで食事会とか、
家と家をつなぐ場そのものが主役になることも、あるんだろうね。

(*・ェ・*)ノ

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