第9回目のトモダチ 南雲さんのいえ 2003年10月26日訪問

南雲 勝志さん

日本が誇る家具のデザイナー。新潟県で箱膳を使う環境で育ち、日本ならではの西洋にない発想で家具をつくる。南雲さんのつくる生活道具には、周囲の空間を支配する存在感がある。自身の生活を大切にしながら、オリジナルなデザインを模索し続けている人。

幸福な家
シュウ
デザイナーの南雲さんの家には、
前から一度行きたいと思っていた。
雑誌でみるその家には、家の中に『ブランコ』があった。
独特な家具デザインで知られる南雲さんの家は、
どんな家なのか、どんな生活をしているのか興味があった。

中央線の豊田駅で電話をして迎えにきてもらう。
なんと、迎えの車は、ディフェンダーだった。
かなりのインパクトだ。
その機能からつくられた無駄のないカタチが心地良い。
この車は、表面を飾るだけで本質を問わないデザインが氾濫する世の中への警笛にもみえる。
こういう車を選択する南雲さんのデザイン姿勢みたいなものを感じた。


南雲さん家に到着する。
多摩動物園のある丘の北斜面、ひな壇状の住宅地だ。
南北に長いその家のカタチは、
南雲さんの細長いモノ好きがあらわれていて興味深い。
そう言えば、町家とか長屋を思い浮かべる。
自身の設計だと言うが、あまり気負いは感じられない。
素直に、
『自分たちが生活しやすい家にしました』
という感じだ。

基本的には、1階がプライベート。
2階がパブリックスペース。
2階は、ほとんどワンルームに近い。
かまぼこ型の天井と、間接照明が心地良い。
あかりひとつで、
こんなに落ち着いた空間になるんだと感心する。
そうそう、南雲さんは、
照明器具のデザインも数多くてがけているので、
あかりの使い方に関してはプロなんだけど、
変にあかりをデザインしました、というプロにありがちな自己主張はここにはない。

いえトモ一行は、そのバーみたいな落ち着いた雰囲気で、すぐに飲み始める。
ふたりの娘さん、それに奥さんも、変な客をいやがるわけでもなく、
特別視するわけでもなく、あくまで自然体で接してくれる。
どうやら、南雲家は、人を呼ぶのが好きらしい。
2階の大きなテーブルも、家族だけでなく大勢の客が来ても大丈夫なためだという。

キッチンで料理する南雲さんの姿も、料理や配膳を手伝う娘さんたちの姿も自然だ。
この自然な振るまいは、なかなかできるものではない。
いつの頃からか、日本人は家に人を呼んでもてなすことをしなくなった。
家は家族だけのもので、客のものではないという観念が定着したように思う。
もちろん、客のためだけを考え、
家族の生活をあと回しにする封建的な家を肯定するつもりはない。
でも、家族だけの閉じた空間も危ないと思う。家はもっとオープンになってもいい。

リビングには、幸福の木が、
天井まで届くほどに高く育っていた。
なんだかこの家の幸福度を計っているようだ。
こんな大きな幸福な木は見たことがない。

家族の幸福は、家族の幸福だけを願っても実現しない。
家族とその家に関係するすべての人の幸福が必要だ。
この家の幸福な理由がわかったような気がした。
ぼくも見習いたいと思う。